生放送のキャプチャより
1月30日に幕張メッセにて開催されたゲームの祭典「闘会議」。その中でドワンゴ代表取締役会長の川上量生さんと、Ingress産みの親であるジョン・ハンケ氏の対談が実現しました。当サイトではその内容を「前編」「中編」「後編」の大きく3つにわけてお送りします。こちらは「後編」です。
出演者
ジョン・ハンケ / Niantic, Inc.c
川島優志 / Niantic, Inc.
川上量生 / 株式会社ドワンゴ
平信一 / 株式会社リインフォース
(Niantic, Inc.の須賀さんもいらっしゃいました)
※読みやすくするため、本文中では敬称略させていただいております。ご了承ください。
Ingressはちょっとの時間でもできる…?
生放送のキャプチャより
川上「ゲームが生活の中に溶け込むという意味で、Ingressは本当に素晴らしいと思います。僕はよく妻と一緒に近所を散歩するときに、2人でIngressをしながらやるんです。すると、僕がポータルを破壊した瞬間に妻がレゾネーターをさしていたりして、ちょっと怒ったりとかしながら(笑)それがすごく楽しいんです」
ジョン「同意です。私がプレイヤーとしてIngressを好きなところは、1分でも1時間でもあるいは何時間でも、自分に合わせて遊べるところで、私もときどき犬と散歩しながらやったり、通勤時間にやったりもしますし、いろいろなやり方(楽しみ方)ができる、そういうところも気に入っています。」
川上「はい。でもそれ僕ね、罠でもあると思うんです。僕はIngressはちょっとの時間でもできると思って自分に言い聞かせてやっているんですけど、いつもすごい時間を取られます(笑)気軽な遊び方は、人によってはできないと思います」
ジョン「人生でも困難な問題が時に訪れますよね。そこから何か学びながら歩んでいけばいいのではないでしょうか(笑)私が、自分が住んでいるところの近くの公園に行きIngressをプレイして、”こんなところにこんなものがあったのか”というのを発見する、そういう場所に行くときの背中を押してくれるような、そういうところが気に入っています」
川上「自然に寄り道ができますよね。そしてその寄り道が長くなるんですよ(笑)それをなんとかしたい」
ジョン「そうですよね(笑)私も仕事につかれた時にちょっと外に出るつもりが、いつのまにか3時間4時間、サンフランシスコ市内をウロウロして帰ってくることもあるんですが、そうすると自分が5年10年訪れていなかったところとかを見ることができて、それはすごく楽しいし、大切な経験になっています」
川上「本当にすごいゲームだと思います」
ジョン・ハンケ氏が「AR」という言葉を使わない理由
平「ハンケさんは、IngressをVRでもARでもなく、HDリアリティであるとおっしゃってますけども、その意味するところを教えてください」
ジョン「人々がARという言葉を使うときに、特定のデバイスを指して使う事が多い。例えば目の前につけて現実とコンピューターグラフィックを重ねるような、そういうものがARであるというふうに言われていますが、私はそういうふうにデバイスに縛られた体験じゃなくて、現実と空想を重ねるようなものをしたい。
そういった部分で、HDリアリティという言葉とは別に”リアルワールドゲーム”という言葉を使ったりします。そういうような体験そのものを提供したいので、すぐにデバイスを結び付けられて考えてしまうARという言葉(を使うこと)は避けるようにしています。
時々新しいデバイスが出てきたり、新しい技術が発見されると、それがまるで素晴らしいゲームの進化のように思われるかもしれないけども、実際はそうではなくて、紙とペンがあれば素晴らしいゲームができる。本当に素晴らしいゲームというのはデバイスではなくて別のところにあるんだと考えています」
川上「実際にIngressをオキュラス(VRヘッドセット)みたいなものを使ってやりたいと思っている人沢山いると思うんですけど、本当に危険なんで、そういうゲームにはしないでほしいと思っています(笑)」
ジョン「そのとおりです。願わくばサングラスのように自然な(見た目の)デバイスができてそれでプレイできればと思いますが、やはり本質的なゲームの楽しさはそことはまた違うところに存在するんじゃないかなと思っています
デバイスやテクノロジーが鍵ではないということの一つの大きな証拠として、今闘会議の会場でもレトロゲームコレクションのコーナーがあって、私も見てきましたが沢山の人が列をつくってゲームを遊んだりしていて、やっぱりゲームの楽しさはテクノロジーだけにあるものではないと思います」
Ingressは想像で楽しむゲーム
川上「僕も想像力がゲームの一番の楽しさだと思います。さっきボードゲームの話をしていたときに(動画の)コメントでも(あった)「テーブルトークRPG」というのはハンケさんはやられていなかったのでしょうか。ダンジョンズ&ドラゴンズのような…」
ジョン「テーブルトークRPG、私も息子たちと一緒にダンジョンズ&ドラゴンズなど床じゅうに広げて遊んだりしていました」
川上「IngressはテーブルトークRPGにすごく近いなと思っていて、なぜかというとゲーム自体はほとんど頭の中で想像してその中で面白いというところがすごく似ていると思います」
Ingressをこんなふうに想像して楽しむエージェントもいます
ジョン「そうですね。Ingressの目的の一つはやはり外にでて素晴らしい銅像や人間が作ったものに出会うことなんですけど、その時に想像でリンク、エキゾチックマター、コントロールフィールドを想像して遊んでいるわけですけども、実際に感じているのは生の景色であって、それをそのまま受けいれて楽しめるのが特徴ですね」
Ingressのリアル進出の可能性
後ろのパワーキューブを指し示す川上氏(生放送のキャプチャより)
川上「ここにポータルがリアルに存在すると、すごくワクワクするんですけど、こういうリアルを使ったIngressのこれからの発展というのはありますか?例えばバースターを撃つような銃みたいなものが(笑)」
ジョン「実際にこういうポータルのように、ポータルの情報を取ってくるようなAPIを利用して、様々なものを作る試みを既に初めています。
闘会議で展示されていたパワーキューブ(生放送のキャプチャより)
最初に日本で行われたこのパワーキューブ、真鍋大度さん率いるライゾマティクスさんなんですけど、このように素晴らしいものを…アメリカでもアート作品の上にLEDの幕をかぶせて、それをIngressのAPIとコネクトして、実際のIngressの世界の色に、その芸術作品が灯るというような、そういうリアルワールドでも楽しめるような試みを既に始めています。なのでこれからもどんどん出てくるんじゃないかなと」
・メディア芸術祭のパワーキューブ
・六本木アートナイトにおける六本木ヒルズ屋上ライトアップ
ジョン「私が今やりたい事の一つは、手の中に収まるような小さなデバイスを作りたいと思っています。今任天堂さんと協力してPokemon GOのためにPokemon GO Plusというものを作っていますけども、あのように自分の手の中に収まって、オーディオも聞けて、ゲームの中で何が起こっているのかというのを耳で聞いたりしながら手の中でそれを操作できる。顔はスマートフォンを見るのではなくて外の世界を見ながら楽しむことができる、そういうものを作りたいと思っています」
Pokemon GOのデバイス、「Pokemon GO Plus」(公式より)
川上「PokemonGoのデバイスは実際にどう作られているか僕もすごく楽しみにしています」
ジョン「私もです(笑)」
川上「新しいデバイスも今後考えられるということですね、Ingressの方でも」
ジョン「もちろんそうです。一方でいろいろな新しい技術が今出てきていますよね。例えばGoogleではマジックリープと呼ばれる網膜に投影するARデバイスであるものとか、プロジェクトタンゴと呼ばれる現実世界をスキャンするマシンなんかも出てきていて、そういったものがこれか新しいものとして出てくると思うんですけど、そういうものはまだ実験的であって、実際に広く使われるにはやはりまだの段階かなと思っています」
川上「ドワンゴという会社は実験が大好きな会社ですので、闘会議というイベントもありますし、4月には超会議という、これ(闘会議)の3倍か4倍の規模のイベントもありますし、そういったところでいろいろと面白い実験ができる機会があったら是非やらせてください」
ジョン「是非アメリカにもそういうイベントを持ってきてください!アメリカにはE3(Electronic Entertainment Expo)という大きなイベントがありますけども、ビジネス向けのもので、ニコニコのやっている(ユーザー向けの)イベントはアメリカにはないので」
川上「そうだと思います。多分それには理由があって、基本赤字なんですよ(笑)世界中で僕らしかやらないと思います」
ジョン「実現してくれてありがとうございます(笑)ここにいる人達と素晴らしい時間を過ごせたのもそのおかげだと思うので、本当にありがとうございます」
(´-`).。oO(一見テクノロジーが売りのように見えるIngressも、プレイしてみたら実際のおもしろポイントはテクノロジー以外の部分にも見つかりますよね)